小説

「匂いとは最も感情を刺激する感覚」様々な液体と器具が並んだ机の上。「体臭は男女の恋愛感情にも関係すると言われるわ」一人呟きながら彼女は薬品を調合する。「ならば！　男子からの好感度を上げる匂い、さらには惚れさせることが出来る匂いも！」目指す...

「さて、いい男を捕まえるわよ」スキー場にやって来た彼女は周囲の男たちを値踏みする。とはいえスキーもスノーボードも初めてだったがそれは問題ない。ゲレンデでは女の子がいつもより可愛くみえるという「ゲレンデマジック」もあるし、「あーん、転んじゃ...

「うぅ、またフラれた」「アンタねぇ、私があれだけお膳立てしてやったってのに何やってるのよ」「ごめ～ん」「まったく『焼け石に水』だったわ」「つまり、この失恋に耐えて成長するってことだね」「は？」「アレでしょ。サウナで焼けた石に水をかけて蒸気...

「目パチパチしてどうしたの？　ゴミでも入った？」「違う！　ウィンクの練習してるの」「はぁ？」「可愛いウィンクをマスターして、男の子のハートを射止めるのよ。アタシのひとみは100万ボルト！」その彼女の顔がウィンクをするたびに変な顔になってい...

「ちょっとエッチな夢を見たんだよね。彼氏とその……しちゃう夢」「へぇー」話を聞かされる友人は気のない相づちをうつ。「でね、彼のアレが……ナスだったの！」「は？」「いやだって、男の人のって見たことないし」「うん、まあ」「一富士二鷹三茄子って...

大晦日の夜、彼女は夜更かしもせずいつもの時間に布団へ入った。しかし、なかなか寝付けずにいるうちに日付の変わり目、一年の終わりを告げる除夜の鐘の音が聞こえてくる。その音を聞くまいと、彼女は両の耳を塞ぐ。この「彼氏が欲しい」という煩悩を払われ...

「また小吉。『待ち人来たらず』だよ」新年の初詣に訪れた神社で、彼女はおみくじを何度も引いている。「いい加減諦めたら？　それに何度も引いてちゃ意味ないでしょ」その様子を一緒に参拝に来た友人は冷めた目で眺めた。「これはガチャなの！　つぎ込んだ...

「進路希望か。ああ、ずっとこのまま女子高生でいたい」そう言って机に突っ伏していた彼女だったが、不意に何かを思いついて進路希望調査の紙にペンを走らせる。翌日、彼女は担任教師に職員室へ呼び出された。「なんだこの、進路が『ネバーランド』ってのは...

「明日に向かって打つべし！　シュッ！」「いきなり何やってるのよ？　アンタ」「今日は『ボクシング・デー』って言うんだって。クリスマスでご馳走を食べ過ぎた身体をシェイプアップする日なんだよ」「スマホで調べたんだけど……箱に入れられた（boxi...

「今日がクリスマス当日なワケじゃん。でもなんか盛り上がらないよね。イヴがクライマックスって感じで」「勘違いしている人も多いけど、『イヴ』は前夜じゃなくて『イブニング』の意味よ。24日の夜がクリスマスの夜。教会の暦では日没が日付の変わり目な...