掌編

「きゃあ～!!」坂道を自転車で下っている彼女は悲鳴を上げた。ブレーキが利かない。暴走する自転車はすでに自動車並みのスピードが出ている。そしてカーブを曲がりきれずに彼女は自転車ごと宙へと飛び出した。（あ……これなんか知ってる）それは子供の頃...

「ああん？　なに見てんだテメェ」そう言ってガンを飛ばすのは、道端に座り込んでいる不良少女。「うわぁ～、スケバンだ！　まだ昭和から生き残ってたんだね！」「ああ？　ナメんじゃねぇぞ？」「すごい！　まさにシーラカンスのような生きた化石！」「見せ...

「お兄ちゃん、風邪大丈夫？」「あ……ああ、なんとかな」「私いいもの持ってきたんだ」そう言って彼女が取り出したのは長ネギだった。「お、お前……そのネギをどう――ゴホッゴホッ」「これを〈挿す〉と風邪に効くらしいよ」彼女はにっこり微笑む。「お、...

「お尻の価値ってなんだと思う？」彼女は真剣な表情で言った。「おっぱいはさ、男にないから触りたいってのは分かる。でもお尻は男にもあるじゃん」そう問いかけられた相手は半眼で彼女を見返す。「電車の痴漢ってお尻を触るイメージなんだけど、男だって自...

ジョリ！「んぁああっ！」鏡に向かって眉を整えていた彼女だったが、うっかりカミソリで片方の眉毛全てをそり落としてしまった。「ううっ……これじゃ恥ずかしくて学校に行けない」そう嘆き彼女は呟く。「こうなったら山に籠もるか……」それは『空手バカ一...